KAIDO
皇室にも愛されたと伝わる老舗『潮屋』とともに。momenの隣で「味わい」を受けもつ宿。
My WayInside the Ryokan

興津宿・清々庵anco。あんこの故郷で、甘いものから旅がはじまる。

皇室にも愛されたと伝わる老舗『潮屋』とともに。momenの隣で「味わい」を受けもつ宿。

どの文化にも、やわらかさを託す素材がある。日本の菓子ではそれが、あんこだ。小豆を砂糖と炊き上げた、暗く静かな甘さ。ほとんどの和菓子の中心に、あんこがいる。そして駿河湾に面した旧東海道の宿場・興津は、あんこの故郷と伝わる土地である。町には、その記憶を受け継ぐ店がいまもある。皇室にも愛されたと伝わる老舗和菓子屋『潮屋』だ。

清々庵ancoは、姉妹棟momenと同じ敷地に立つ。興津駅から歩いて二分。二軒の町家は、宿場のいちばん古い仕事を分け合っている。momenが受けもつのは夜——日本一と呼ばれる布団職人・新貝晃一郎の木綿布団を真ん中に、眠りだけを約束する。ancoが受けもつのは昼と、舌だ。『潮屋』とともに手を動かして生菓子をつくり、茶の湯に座り、地元の食材で料理をする。名前はもちろん、あの甘さから取っている。

ancoで生菓子を手のひらの上でかたちづくる宿泊客
手のひらの上で、生菓子がかたちになっていく。ancoの和菓子づくり体験。

KAI堂がこの二棟を直したとき、いちばんの誘惑は「全部きれいにすること」だった。しかしancoの部屋には、最初の百年の痕跡がそのまま残されている。すり減った土壁、黒ずんだ梁、古い貼り紙。そのなかに、新しい快適さだけを静かに差し込んだ。建物の歴史は直すべき欠陥ではなく、旅人が海を越えてまで触れに来るもの——それがKAI堂のどの宿にも通じる考え方だ。

ancoの窓辺に置かれた革張りの椅子
ancoの2階。古家の傷んだ壁は、見つけたときのまま残した。

ancoの滞在は、五感で進んでいく。明日には消えてしまう菓子を自分の手で包み、その甘さに応えるために生まれた茶を飲み、百年おなじ通りを見てきた家で眠る。甘いものは、文化への良い入口だ。求められるのは、ただ味わうことだけなのだから。

まず味わい、それから休む。二軒が並んで、宿場のもてなしはようやく完成する。清々庵ancoの建物と空室状況はこちら。ご家族・ご友人とは両棟貸切も。

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それぞれの道を、旅・宿・地域へ。